■援助金
■支出
■決定
決定の代決処理をしたことに故意又は重過失は認めら れないから,市長には,Bに対する指揮監督上の義務違反は認められない。
第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件援助金の支出の違法性)について (1) 原告は,地対財特法が国庫補助の対象として規定する地域改善対策特 定事業は,「高等学校,中等教育学校の後期課程,高等専門学校,短期大 学又は大学に在学する者に対する奨学金の貸与」と規定されていること等 をもって,国庫補助を受ける同和奨学金について,実質的給付制として運 用する裁量は,京都市には認められておらず,本件制度は同和奨学金の根 拠法令違反であると主張する。
しかし,国庫補助の対象事業が貸与制の奨学金に限られていることをも って,給付制の奨学金の公益性が直ちに否定されるわけではなく,地方自 治体が独自に一般財源から給付制奨学金制度を実施することや,独立した 補助金事業として奨学金の返還を補助するなどの施策を行うことが直ちに 禁止されると解することはできない。
よって,地対財特法等が国庫補助の対象として貸与制の奨学金制度を規 定していることをもって,直ちに,本件援助金に係る支出が,違法な支出 であるとは認められない。
- 37 - ( ) 2 次に,援助金の性質について検討するに,援助金の支給は地方自治法 232条の2に規定する「補助」に該当するものと解される。
そして,一 般に,地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の 増進に努めるとともに,最小の経費で最大の効果を挙げるようにすべき責 務を負っているのであり(地方自治法2条14項),地方財政の健全な運 営を確保するためには,単に収支の形式的な均衡を保持することだけでは なく,経費の支出に当たっては,その目的を達成するための必要かつ最小 の限度を超えてはならないものとされている(地方財政法4条1項)とこ ろ,補助金の支出については,「公益上必要がある場合において」するこ とができる(地方自治法232条の2)のであるから,本件援助金の支出 について,同法232条の2にいう「公益上の必要性」があるかを検討す ることとする。
そして,上記の補助金の支出に係る公益上の必要性の存否は,地方公共 団体の議会あるいは執行機関において,社会的,地域的諸事情を総合的か つ合理的に勘案して判断すべきであって,その裁量の範囲は相当広範なも のというべきであり,当該裁量権の行使が恣意的であってその逸脱の程度 がもはや法の内在的目的に適合しない程の域に達したという場合に,違法 の問題が生じるに至るものと解すべきである。
(3) 文中掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件要綱の制定当時まで の同和地区の生活実態につき,以下の事実が認められる。
ア昭和45年から昭和57年までの高校進学率の推移は,以下のとおり であり,同和地区では,昭和48年を除き,全市の平均と比較して数% 以上低い割合であった(乙1・2頁,乙20)。
同和地区全市 昭和45年3月74.6% 89.7% 昭和48年3月92.8% 93.9% - 38 - 昭和51年3月85.7% 93.6% 昭和54年3月86.7% 93.0% 昭和57年3月85.0% 92.0% イ世帯年収の推移を見ると,昭和59年度京都市同和地区住民生活実態 把握事業の調査によれば,同和地区では世帯年収が0円から99万円の 世帯が12.4%,100万円から199万円の世帯が21.5%であ り,同和地区における生活基盤は,なお脆弱であった(乙18)。
また,昭和58年ころ,地域改善対策大学奨学金の借受者の属する世 帯について調査したところ,所得が同和奨学金の返還免除の基準以下で あった世帯は,全体の87%に達していた(甲9・6頁)。
(4) また,文中掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件要綱の制定後 の事情として,以下の事実が認められる。
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ア進学率の推移等 京都市文化市民局人権文化推進部(旧同和対策室)は,数年に1度,同 和地区の生活実態調査を実施しているところ,この調査結果によれば, 本件要綱制定後の同和地区における教育状況は,以下のとおりである(乙 18,20)。
(ア) 高校進学率は,昭和59年以降,ほぼ9割以上で推移し,全市と の間に有意的な差はなくなってきており,平成5年3月,平成6年3 月及び平成10年3月には,むしろ同和地区の方が全市を上回った。
もっとも,全日制国公立高校への進学希望の達成状況をみると,平 成6年度における達成率は,全市では70.4%であるのに対し,同 和地区では53.7%にとどまっていた。
また,平成7年3月における高校進学の内容は,同和地区では公立 が28.7%,私立が56.7%であるのに対し,全市では公立が5 3.4%,私立が35.7%であった。
- 39 - (イ) 高校中退率は,以下のとおり推移している。
同和地区全市 昭和56年3月18.2% 8.2% 昭和61年3月13.5% 5.7% 平成3年3月19.7% 6.0% 平成6年3月17.7% 6.1% (ウ) 大学進学率は,以下のとおり推移している。
同和地区全市 昭和56年3月25.8% 41.3% 昭和61年3月22.8% 41.0% 平成3年3月14.8% 41.2% 平成7年3月30.6% 49.2% イ前記生活実態調査によれば,平成3年度,平成5年度及び平成12年 度の同和地区における世帯ないし有業者の年収等は,以下のとおりであ る。
(ア) 平成3年度京都市同和地区生活実態調査の結果 世帯年収は,0円から99万円までの世帯が12.3%,100万 円から199万円までの世帯が17.3%であるのに対し,500万 円から699万円までの世帯が18.5%,700万円から999万 円までの世帯が15.0%,1000万円以上の世帯が11.3%で あり,2極化傾向にあった。
なお,平成4年就業構造基本調査によれ ば,全市における世帯年収は,500万円から699万円までの世帯 が17.5%,700万円から999万円までの世帯が15.2%, 1000万円以上の世帯が12.8%であり,高所得世帯の割合につ いては,同和地区と全市との間に,それほど大きな差はなかった(乙 18)。
- 40 - また,同和地区の総有業者の36.2%が市関係職員であった(甲 4・35頁)。
(イ) 平成5年度京都市同和地区生活実態調査の結果 有業者の年収は,500万円から699万円までの者が16.2%, 700万円から999万円までの者が6.1%,1000万円以上の 者が1.0%であった(甲4・31頁)。
(ウ) 平成12年度同和地区住民生活実態把握事業・中間集計の結果 世帯年収は,500万円から699万円までの世帯が7.9%,7 00万円から999万円までの世帯が9.1%,1000万円以上の 世帯が6.2%であった(甲4・18頁)。
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